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2011年10月 1日 (土)

涼風家シネマクラブ■ヴァンダの部屋

監督/ペドロ・コスタ、
キャスト/ヴァンダ・ドゥアルテ、ジータ・ドゥアルテほか。
ポルトガル=ドイツ=フランス

「廃墟」が流行っているようだ。個人的には15年くらい前の流行で、いまさらという感は否めない。ペドロ・コスタ監督の『ヴァンダの部屋』も、もしかしたらそういう「廃墟ブーム」に当て込んだ公開なのかもしれない。
 舞台はリスボン。しかし画面に登場するのは「フォンタイーニャス」という街の、それもある部分を切り取った1部だけで、大半は主人公であるヴァンダの部屋の中である。アフリカからの移民が多く住む荒廃した街は、人々が暮らしているにもかかわらず、半ば廃墟と化している。いや、廃墟に人が住んでいるというべきか…。街は再開発が進められ、いま暮らしている部屋のとなりで、重機が建物を壊しているといった殺伐とした状況である。そんな中で、主人公を初め、多くの住民がドラッグに溺れている。

 この映画には起承転結などのストーリーはない。ドキュメンタリーでありフィクションであり、そのどちらでもない。ヴァンダは昼でも暗い部屋の中でドラッグを吸い、陰鬱な空気が映画全体に漂っている。焦燥と絶望に満ちた人々が暮らす明日のない街。取り立ててドラマティックな展開があるわけでもなく、またヴァンダが暗い部屋でクスリを吸う…という繰り返し。それでも画面から目を離すことができないのはなぜだろうか。
 ペドロ監督は「小津がいなければ『ヴァンダの部屋』はなかった」と語り、小津映画から受けた影響を、廃墟に差し込む光で知らしめている。日本的な印象の強い小津安二郎の映像表現が、ヨーロッパの監督に受け継がれているという驚きと感動。だが、それ以上にこの映画には言葉では表現できないパッションがあり画面を見つめるわれわれから言葉を奪いさっていくのだ。
 3時間弱という、文字通りの長編であるこの映画は、3年にわたるヴァンダの生活を記録したものでもある。そう考えれば濃縮された時間がそこに流れていることは想像がつくだろう。そして、例え退屈であっても、それぞれがその人生から目が離せないように、われわれはヴァンダの人生から目が離せなくなっていくのだ。それが絶望と苦痛に満ちていようとも。いやそれだからこそ…。
 この作品は劇場で観るべきだ。映画館の暗闇の中に映し出されるまばゆい光こそが、廃墟を美しく見せるのだから…。

「微熱」03年 月号掲載

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