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怪獣・特撮

2012年7月23日 (月)

涼風家シネマクラブ■玩具修理者

監督/はくぶん
キャスト/田中麗奈、忍成修吾、大平奈津美、姿月あさと、美和明宏、ほか。
2001年/47分/日本

 小林泰三の短編小説で、第2回日本ホラー小説大賞受賞作品。
 子供たちだけが知る「玩具修理者」に死んでしまった弟の修理(生き返らせる)を依頼した少女の奇妙な話。
 監督のはくぶんはCG界の第一人者と紹介されているところもあり、本作が劇所初作品となり、本編でもCG合成が多用されている。また合成だけではなく照明も独特の雰囲気を醸しだしていて幻想的な本編の雰囲気を特徴づけている。
 玩具修理者は子供たちのあいだで「ようぐそうとほうとふ」は呼ばれており、これは「クトゥルー神話」に由来する。
 壊れた玩具をなんでも直してくれるという玩具修理者に、子供たちは死んだ猫を生き返らせて欲しいと依頼したりもするが、修理者は複数の修理を一度に行うのでときどき部品が混ざったりもする。
 ところで本作では「人とモノの境界線」が繰り返し語られる。人とモノを隔てるものは何か、人とモノはなにが違うのか…。弟を生き返らせてもらった少女はやがて大事なことに気がつき、それを確かめようと弟に会うのだが…。
 全体にゆったりとした雰囲気が漂い、美和明宏による玩具修理者のモノローグがそれを増幅している印象もある。主な舞台となるアイティークトイの店も外界と時間の流れが違っているような印象だし、ストーリーの大半は主人公の回想なのでリアルタイムの時間の流れを感じない作品となっている。画面は美しく幻想的で、作り手によってはグロいスプラッターにもできるところをファンタジックに仕上げている。
 もともとがホラー小説大賞作品ということで、ラストにもショッキングな映像が登場するのだが、全体としては幻想的な作品と言っていいだろう。強いて言えば全般的に平均した調子で演出されている印象で、インパクトのあるシーンが乏しかったという感じはある。もっともそこがはくぶん監督の個性ではなかったのかという気がしないでもないのだけれど。

2012年7月20日 (金)

涼風家シネマクラブ■魔界転生(平山版)

監督/平山秀幸
キャスト/窪塚洋介、佐藤浩一、麻生久美子、黒谷友香、吹石一恵、柄本 明、中村嘉葎雄、ほか。
2003年/105分/日本

 90年代にオリジナルビデオとして映像化されてもいるが、劇場映画としてはこれがリメイク版といえる。
 深作版よりは原作に近い内容になってはいるが、やはり窪塚演じる天草四郎が魔界衆のリーダーという点では原作をアレンジしている。もっとも転生シーンではCGも駆使して原作に近い描写が見られる。
 主要な俳優陣に窪塚、佐藤、そして杉本哲太が起用されているのだが、この三人、個性的といえば聞こえはいいが、なにを演じても同じという印象がある。本作でも窪塚の天草四郎、佐藤の柳生十兵衛であり、天草四郎を演じた窪塚、十兵衛を演じた佐藤という言い方はしにくい。
 映画本編は程よい緊張感で最初から最後まで一気に楽しめる。深作版も好きなのだが2時間を越える長さもあり、この平山版のほうが回数的には繰り返し見ている気がする。
 81年版と同様、東映京都の制作で、特撮は特撮研究所が担当。特撮監督は佛田 洋(81年版は矢島信男)。
 81年版では首を刎ねられた天草四郎が、自分の首をわきに抱える抱えるシーンもあったが、今回の窪塚は、映画冒頭で首を刎ねられ殺されるシーンはあるものの、そのほかでは首だけとなるシーンは出てこなかった。
 また本作では宮本武蔵を長塚京三が演じていて奥義に達した剣術家の雰囲気をかもしだしているが、セリフの重厚感は81年版の緒形 拳に軍配が上がるのではないだろうか。
 81年版では千葉真一演じる柳生十兵衛と天草四郎を演じた沢田研二に注目が集まったわけだが、本作も天草四郎を演じた窪塚洋介まずありきという印象がある。沢田研二より少年であった天草四郎に近い印象にはなったと思うが、このキャスティングがベストだと感じる人は少ないのではないだろうか。
 

2012年7月18日 (水)

涼風家シネマクラブ■魔界転生(深作版)

監督/深作欣二
キャスト/千葉真一、沢田研二、佳那晃子、緒形 拳、若山富三郎、室田日出男、丹波哲郎、真田広之、ほか。
1981年/122分/日本

 角川映画で横溝正史、森村誠一郎ブームを作った角川春樹が、今度は山田風太郎の忍法小説ブームを角川文庫で復活させていた時期の作品。というより、この映画がキッカケで角川文庫版の山田風太郎作品は盛り上がったといえる。当時すでに刊行済みだった本原作文庫も、映画化に合わせて辻村ジュサブローの人形を表紙にして大々的にキャンペーンも展開していた。
 さて、原作をお読みの方は本作がかなり脚色されているのはご存知のことだろう。江戸幕府転覆を企む魔界衆のリーダーが沢田研二演じる天草四郎になっているわけだが、原作に於ける四郎の扱いは一魔界衆にすぎない。また転生の方法自体も原作にあるような描写は登場しない。
 本作の魅力をザックリと言うのであれば、沢田研二の天草四郎、千葉真一の柳生十兵衛、そして邦楽をベースにした音楽ではないだろうか。千葉の十兵衛は実にハマッていて、この人のほかに十兵衛はありえないのではないかと思えるほど。沢田の天草四郎も妖艶な雰囲気がいい。もっとも本来の天草四郎は少年のはずなので沢田研二では多少年齢的な矛盾はあるのだが。公開当時は沢田研二と、霧丸役の真田広之のキスシーンも話題になった。
 全般として伝奇時代劇という内容の本作であり、ところどころに特撮も使用されている。特に天草四郎は首だけとなるシーンが冒頭と終盤にある。特撮を担当したのは東映でジャイアントロボなどに携わった特撮研究所。クライマックスの江戸城炎上シーンなどは見事である。
 最後に、細川ガラシャ役の佳那晃子も本作の見どころのひとつといっておこう。

2012年7月16日 (月)

涼風家シネマクラブ■透明人間

監督/小田基義 撮影・特技指導/円谷英二
キャスト/河津晴三郎、三條美紀、土屋嘉男、高田 稔、ほか。
1954年/70分/日本

 東宝が『ゴジラ』に続いて制作した特撮作品で、のちの『ガス人間~』や『液体人間』など「変身人間シリーズ」の先駆的作品とされている。
 透明人間というアイデア自体は小説、また海外の映画からのものだが、第二次大戦中の日本軍の秘密特攻部隊として作られたものと設定。透明化する理由も科学的な説明がなされている。
 観客の興味としては、透明人間の映像的な表現だと思うが、合成もよくできていて感心した。もちろんこれはモノクロ作品ということも功を奏していたと思う。
 またストーリー自体も、透明人間の悲哀がよく描かれていて心に残る名作といっていい。
 このあと東宝特撮作品には頻繁に登場する土屋も、新聞記者役で登場し、前半では土屋が主役かと思うくらいの活躍ぶりである。のちに『ガス人間』として登場するのも、あるいはこの作品が伏線になっていたのかもしれない。
 第一作『ゴジラ』同様、モノクロ作品ということもあってかテレビ等で放映される機会も少なく(というより個人的には放映されたという記憶はないのだが)、ビデオ化、DVD化でようやく鑑賞できたという特撮ファンも多いのではないかと思う。作品自体の完成度の高さからいえば、これは非常に残念なことだったのではないだろうか。
 特撮に関していえば、透明人間の表現のほか、派手な合成はないように思っていたところ、クライマックスで突然、ガスタンクが爆発するというシーンが登場。このあたりの合成も違和感のない仕上がりになっている。
「変身人間シリーズ」がそうであるように、この『透明人間』もストーリーの根底にある人間としての愛憎がうまく表現されているので、特撮ということだけではなく、一本の映画として未見の方にはぜひ観ていただきたい作品である。

2012年7月13日 (金)

涼風家シネマクラブ■空の大怪獣 ラドン

監督/本多猪四郎、特技監督/円谷英二
キャスト/佐原健二、白川由美、平田昭彦、ほか。
1956年/82分/日本

『ゴジラ』に続く大怪獣として、怪奇実話などで知られる作家、黒沼 健に原作を依頼して誕生した作品。ちなみに東宝特撮作品では初のカラー撮影でもある。
 原作にあたる黒沼 健の『ラドンの誕生』は映画公開に先だって「中学生の友」昭和31年10月号の付録として発表されたが(映画公開は同年の12月26日)、香山 滋が『ゴジラ』の小説版でしたように、黒沼も主人公を少年に設定するなど映画本編とはところどころ違う点もある。また小説版では古代生物であるラドンが現代に蘇る理由として地球の温暖化を大きく取り上げているが、映画本編では理由として弱いと見たのか、「地球が温暖化しているようだ」というセリフにとどまっている(加えて平田昭彦演じる古生物学者の推論として核兵器の影響をあげている)。

 ストーリーは、九州・阿蘇山近くの炭鉱に始まり、炭鉱に事故が起こり、行方不明者や捜索に入った人々が鋭い刃物のようなもので殺されているのが発見される。行方不明となっている男のひとりが犯人と目されたが、実はメガヌロンという古代昆虫の幼虫の仕業だったことがわかる。
 炭鉱内でメガヌロンを退治しようとしたとき落盤が起こり、主人公である河村は行方不明となってしまう。ところがしばらくして阿蘇山付近で起こった深度の浅い地震によってできた陥没地帯で河村は発見される。しかし河村は記憶をすっかりなくしていたのだった。
 同じころ航空自衛隊が未確認の超音速飛行物を発見。追跡するものの飛行物体のために撃墜されてしまう。飛行物体は九州を中心に周辺の空で目撃され旅客機が墜落するなどの被害も起こるのだった。そして阿蘇火口付近で行方不明になったカップルが落としたカメラに移されたフィルムから巨大な生物の羽のようなものが確認されるのだが…。
 記憶をなくした河村は文鳥の卵を見て、落盤事故のあと迷い込んだ地下の空洞で巨大な卵から孵る生物と、その生物がメガヌロンを餌としてしていた光景を思い出すのだった。
 そしていよいよハッキリとその姿を現したラドンは戦闘機の攻撃により福岡の街に降下、多大な被害をもたらすのだった。
 戦車や戦闘機による攻撃の中、もうひとつの飛行物体が福岡に飛来する。ラドンは2匹いたのだ。
 阿蘇火口の洞窟の中を巣とするラドンに対して、決死の攻撃が始まる。
 
 鳥型の巨大生物は造型的にも撮影的にも難しいようで、円谷作品でも鳥型の生物が登場するとどうも「作り物」的に見えてしまうことが多い。が本作においてはそうとうな努力があったようで、少なくともぬいぐるみアクターが入った状態でのシーンでは翼のある巨大生物が違和感なく鑑賞できる(ところどころ頭を支えるピアノ線が見えてしまうのは残念だが)。
 またラドンの羽ばたきによる風圧で建物などが吹き飛ばされるシーンは、その後もゴジラ作品やウルトラシリーズなどでも流用されている見事な撮影である。
 佐原健二はこれが初主演作品。撮影の裏話などは『素晴らしき特撮人生』という自叙伝にも語られている。もっとも苦労したという記憶喪失状態の演技も初主演とは思えないしっかりしたものだった。

2012年7月11日 (水)

涼風家シネマクラブ■妖怪大戦争(2005年)

監督/三池崇史
キャスト/神木隆之介、宮迫博之、菅原文太、近藤正臣、阿部サダヲ、高橋真唯、忌野清志郎、岡村隆史、竹中直人、豊川悦史、栗山千明、ほか。
2005年/124分/日本

 最初にことわっておかなければいけないのは、本作はオリジナル版ではなくテレビ放映版で鑑賞したということ。実は物語の重要なキーワードの部分や結末がカットされていたほか多数の妖怪の登場シーンも放送されなかったようである。
 さて、本作は1968年の大映映画『妖怪大戦争』のリメイクとされている。しかしながらタイトルと妖怪軍団が悪の妖怪に挑むという基本構成をのぞいてはまったくのオリジナルであり、本作に関していえば「リメイク」をうたうことでマイナスの印象を与えているのではないかと思われる。金子監督の『ガメラ~大怪獣空中決戦』のように、同じシリーズの新作として見た方がいいだろう。
 時代設定を現代に移しているが、田舎の祭りに内包されるかつての伝説から主人公のヒーロー性を描き出すあたりはなかなかうまい。とはいえ、妖怪と機械を合成した機怪や、悪の首領として加藤保憲を持ち出すあたりはいただけない。豊川悦史は加藤をうまく演じていたが、どうしても嶋田久作じゃない加藤には違和感があるし、機怪に至ってはターミネーターやらほかの特撮だったりアニメだったりのイメージの合成みたいで白けてしまう。
 クラスメイトから弱虫やら泣き虫とからかわれる主人公が、妖怪の助けを借りながら必死で戦うところはこの手の映画の定番ストーリーともいえるが、主人公の少年の心を奮起させるものがもうひとつ伝わってこなかったのは、テレビ版でカットされたシーンに理由があるのだろうか。
 妖怪の造形は、大映作品を再現しつつ最新の技術を用いている感じ。また3000人ものエキストラを動員してのシーンは圧巻でもある。
 元作品である68年の『妖怪大戦争』その前の『妖怪百物語』は怖さの中にユーモラスなシーンがあったという印象だが、本作ではユーモラスな中にアクションシーンが挟まれているという印象で、雰囲気はまったく違っている。時代的に妖怪で怖がる子供も少ないのだろうが、もう少しおどろおどろしい雰囲気も出してほしかった気がする。

2012年7月 9日 (月)

涼風家シネマクラブ■東海道お化け道中

監督/安田公義、黒田義之
キャスト/本郷功次郎、戸浦六宏、穂積ぺぺ、古城門昌美、左 卜全、ほか。
1969年/78分/日本

 怪奇特撮時代劇シリーズの第三作目は股旅物。
「鬼塚」と呼ばれる妖怪を祀った塚守りが、年に一度日本中の妖怪が集まるといわれる日に、塚でやくざの刃傷沙汰に巻き込まれ切られてしまう。この場所で血を流してはいけないと何度も忠告した上でのことだった。自分の不正を暴かれるのを恐れた勘蔵と、その子分たち「火車組」は、その直後から怪異な現象に襲われ、告発する書状を見失ってしまう。たまたまその近くにいた塚守りの幼い孫娘、美代がそれを持っているのではないかと追うのだが、美代は塚守りのいまわの際に聞かされた父親を訪ねて東海道を一人旅するのだった。
 そんな美代と知り合い父親の元まで送ろうとするのが、不正を告発しようとして勘蔵に殺された仁兵衛の子分、百太郎。百太郎自身も勘蔵の手下たちに命を狙われながら、美代とともに東海道を旅していく。
 妖怪は、第一作『妖怪百物語』同様、人間の身勝手さや強欲に対して祟っているようだ。もっとも本作のストーリー自体は美代の父親探し的なものが主体で、妖怪はどこか取ってつけたような印象もないではない。もう少しストーリー自体に絡んでいたらという気がしてしまう。
 登場する妖怪の大半は前作、前々作に登場したもので、本作が初登場というものは少ない。主演の本郷功次郎はガメラ、大魔神、そし妖怪シリーズと大映特撮作品を総なめという感じ。もっとも本作公開時に併映だった『ガメラ対大悪獣ギロン』には出演していなかった。個人的には本郷より戸浦の印象が強い。仁兵衛の子分で百太郎の弟分でもありながら、勘蔵の側に付く複雑な役柄ということもあるが、戸浦六宏という俳優の演技を堪能できる一本でもあるように思える。
 ラストシーンはシリーズを通しての百鬼夜行的なものになってはいるが、本作では「鬼塚」に消えていくということで夜行というには少し趣向が違っているような気もする。本作を加えて「妖怪三部作」とされているわけだが、登場する妖怪がかぶっているという点をのぞけば、タイトルに「妖怪」が付かないこともあり独立した作品と見られないわけではない。あえていえば「妖怪三部作」以外に作られた『四谷怪談』などの怪談映画とオリジナル作品である「妖怪シリーズ」の中間に位置するようなものではなかったのではないだろうか。なんといっても前作、前々作に見られたユーモラスなシーン(妖怪絡みの)がないというのが大きな違いだろう。

2012年7月 6日 (金)

涼風家シネマクラブ■妖怪大戦争(1968年)

監督・特技監督/黒田義之
キャスト/青山良彦、川崎あかね、神田 隆、大川 修、戸浦六宏(語り)、ほか。
1968年/79分/日本

 前作とはうって変わってエンターテインメントに徹した活劇として構成された、シリーズの中でも特に知名度の高い本作。監督は本シリーズ、『大魔神』シリーズで特技監督を担った黒田義之で、本作では本編と特撮を兼ねている。
 古代バビロニアの吸血妖怪ダイモンがよみがえり、海を越えて日本へやってきた。代官・磯部兵庫の姿を借り次々と人の生き血を吸っていく。
 代官の屋敷の池をねぐらにしていた河童がそのことに気づいたが、ダイモンに追い払われ日本妖怪の助けを借りることに。しかし油すましたちの手を借りては見たもののダイモンの力は強大で倒すことができない。
 一方、代官に仕える真山新八郎は叔父の祈祷師から代官が妖怪に命を奪われていることを知らされ、妖怪を退治しようとするのだが、ダイモンの妖力は祈祷師の命まで奪ってしまう。祈祷師に託された弓でダイモンの目を射抜き、妖怪を倒したように思えた新八郎だったが、新しく赴任してきた代官に姿を変えたダイモンのため、処刑を宣告されてしまうのだ。
 関西弁の油すましなど妖怪たちの方言で日本各地から集まっていていることを匂わせるなどの演出もいい。日本の妖怪が結集するあたりは子供たちには楽しみなシーンだろうし、善の妖怪と悪の妖怪という分かりやすい構図もよかったのだと思う。ただ日本の妖怪が総動員で立ち向かわなければ勝てないダイモンの強さが目立ってしまったのは個人的にはちょっと残念な気がしないでもない。
 ダイモンは大魔神同様、目だけは俳優の目をそのまま生かした造形。作り物の眼球でない凄味は大映ならではというところか。演じたのも大魔神と同じ橋本 力。
 前作の好評を受けて急遽制作が決まった本作は、前作と同年の冬休みに公開された。併映は『蛇娘と白髪魔』。ホラー作品の2本立てということからも怪獣ブームが去っていたことがうかがわれる。
 巨大な怪獣が暴れる作品とは違って等身大の妖怪が活躍する本作で目立った特撮・合成というと、やはりダイモンが分身するシーンとなるだろうか。また本作でもラストシーンの百鬼夜行が幻想的に描かれ余韻を残している。
 妖怪がセリフをしゃべるのはシリーズ3作のうちでも、実は明確なものはこの『妖怪大戦争』だけ。妖怪と人間の関わりという点でも他の2作とは一線を画しているようなところがある。
 まずは気楽に本作を楽しみ、2回目、3回目に上記のようなことに気を留めて鑑賞してみるといいかもしれない。

2012年7月 4日 (水)

涼風家シネマクラブ■妖怪百物語

監督/安田公義 特技監督/黒田義之
キャスト/藤巻 潤、高田美和、平泉 征、坪内ミキ子、ルーキー新一、吉田義夫、ほか。
1968年/79分/日本

 大映の妖怪三部作第一弾としてあまりに有名な一作。全体として怪奇な雰囲気の仕上がりとなっているが、からかさお化けのシーンなどでユーモラスな演出もあり、子供の観客にも楽しめる。
 本作の冒頭で「百物語の会」の説明があり、会の終わりにはおまじないをすることが語られ、本編で悪役となる但馬屋が百物語の会の後おまじないをしなかったことで妖怪にたたられるのをさりげなく説明している。同時に古い社を取り壊すなどたたられる要素は複数出てくる。
 二作目、三作目にも登場する妖怪のほとんどは本作で登場しているが、造形そのものは使い回しということではなかったようだ。ちなみに本作でインパクトのあるエピソードになっているろくろ首は『妖怪大戦争』に登場しているものの方が肌の質感などはいいようだ。妖怪のデザインは水木しげるがほとんどを担当し、一部大映映画の『赤胴鈴之助』に登場したものを改造したりしたものもあったようだ。
 この時期、テレビではアニメの『ゲゲゲの鬼太郎(白黒)』の放送も始まり、怪獣ブームから妖怪ブームに移行していくことになるのだが、本作もそのきっかけのひとつになったのはいうまでもない。アニメに登場する妖怪たちの実写版といえなくもないという気がする。ちなみに怪獣ブームの中で放送された水木しげるの『悪魔くん』にはブームの影響から怪獣のような妖怪が登場していたが、ゴジラと人気を二分するガメラを生み出した大映から妖怪ブームのきっかけとなる本作が、水木しげるのデザインで映像化されたのも面白い。
 また落語ファンには但馬屋で催される百物語の会に登場する林屋正蔵も見逃せないだろう。ここで語られるエピソードとして登場する「おいてけ堀」のシーンは本作のなかでも印象に残るもののひとつ。正統的な怪談といえるだろう。
 印象に残るといえば三作共通していえるものだが、ラストシーンの百鬼夜行だろう。本作で描かれるそれは「百鬼夜行図」の映像化ともいえるもので、まさに怪奇な雰囲気とユーモラスな雰囲気が融合した見事なシーンといえるだろう。
 公開時の併映は『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』で、予算的にも厳しくなったガメラに比べてしっかり作られた感のある本作でもあるので評判もよく、すぐにシリーズ化が決まったようだ。

2012年7月 2日 (月)

涼風家シネマクラブ■日本誕生

監督/稲垣 浩、特技監督/円谷英二
キャスト/三船敏郎、司 葉子、香川京子、鶴田浩二、平田昭彦、ほか。
1959年/180分/日本

 本作は昭和三十四年度の芸術祭参加作品であり、東宝映画1000本目の記念作品でもある。作品のスケールも大きいが、二部構成、合計180分という大作となっている。
 実はこの作品を観たのはDVDになってから。
 これまで特撮や怪獣関連の書籍などで知っていた本作のイメージといえば三船敏郎演じるスサノオノミコトとヤマタノオロチの対決くらいのもので、特撮シーン自体もあまりないのだろうと思っていたのだが、これはとんでもない誤解で、冒頭のシーンから特撮であり、全編特撮や合成を多用した作品だった。また特撮シーン以外でもロケシーンとスタジオ撮影をうまく組み合わせて画面のスケール感を出している。
 三船敏郎は主人公ヤマトタケルと映画の中で語られる神代の時代のスサノオノミコトの二役。ほかに志村 喬や東野英二郎、三木のり平、榎本健一などそうそうたるメンバーが出演し、宝田 明、久保 明も出演している。
 雑誌や書籍で見ていたヤマタノオロチのスチールは、ゴジラシリーズなどの怪獣と比べて貧弱な印象があったのだが、本編で見るとそのようなことはまったくなく、巨大な大蛇とスサノオとの対決を堪能できる。
 とはいえ本作の特撮では、嵐や火山噴火に伴う地震・地割れといったシーンがより迫力のある映像として印象に残る。公開が1959年なわけだが、70年代に公開された『日本沈没』と比べてもそれほど劣って見えない特撮シーンになっているのではないだろうか。
 第一部と第二部のあいだには「休憩」も入るが、3時間の大作は飽きずに見ることができる。それだけ練られたシナリオともいえるだろう。
 未見の方はぜひご鑑賞ください。

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